8月12-13日

この記事を投稿している今は、9月1日の夜。
ぼくは8月22日から仕事の関係で埼玉の寮に住んでいる。
8月12日から13日にかけて、その一週間後には関東に住むというのに
あえて小旅行として東京に行ったのだけど
この雑文はその直後に書きかけていたものです。
実家を発つまでには完成させておくつもりが
荷物の準備や仕事で忙しくてけっきょく今日まで放ったらかしに。
これ以上寝かすわけにもいかないのでさっさと仕上げちまおうと
少し手直ししてから今日掲載することに。

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この2日間、ワールドハピネスを見に東京に行っていた
交通費を極力抑えるため、前日の晩に京都駅から夜行バスで東京に向かった
しかし早朝東京に着いてもしばらくすることがないのは明白だったので
事前にネットで調べた御徒町の銭湯に入り身だしなみを整えた。
新幹線の日帰りできる身軽さもいいけど、
夜行バスの時間を持て余すこの感じは嫌いじゃないかも
朝から江戸の湯に浸かれば休み気分もひとしおだった

風呂を出てもまだ8時過ぎだったので、目に付いたファストフードに入って
持参した文庫本を読んで時間をつぶしていた
「第三の新人」と呼ばれる世代の作家について、村上春樹が論じた本だった
彼らは、社会問題への介入に積極的だった当時の戦後派作家たちとは異なり
社会派とは距離を置いて非政治的で私的な物語をマイペースに紡いでいた
その直後鮮烈なデビューを飾った石原慎太郎大江健三郎などの新進作家に押されて
彼らの存在感は次第に薄れていく 今日、彼らの知名度はわりと低いのである
ぼくも安岡章太郎遠藤周作だけ名前くらいは聞いたことがある程度で
何の予備知識もなかったけれど、村上春樹は彼ら第三の新人による作品群にこそ
物語の普遍的な魅力があると認めて大学の講義でまで取り扱ったというのだ
ふだん海外文学にしか言及がない彼が腰を据えて日本文学を徹底的に語る
というだけでも十分興味深い ぼくは歯切れの悪いパサパサのエッグマフィンを食べながら
待ち合わせまでこの本を熱心に読んでいた

東京駅から京葉線で10分ほど先の新木場駅へ
ここで同伴者の女の子と合流、
雨天が予想された当日は、午前中の気紛れみたいな雨を別にすれば
おおむね良好な天気に見舞われた
我々はメインステージがよく見えるAブロック右前くらいにシートを敷いて
開演前は演奏を心待ちにビールを飲んだ
そして演奏中もだいたいはビールを飲んで過ごしていた
以下、印象に残ったステージを抜粋

@エゴラッピン
あまり熱心に聞いたことがなかったんだけど
ワールドハピネスが終わってから今まで2日間
延々とベストを聞き続けているあたりぼくはやはり
初見の中納良恵にずいぶん好印象をもったんだろう
力強いソウルフルなヴォーカルやメディアへの露出の少なさから、
わりと気難しいお姉さまっていうイメージをなんとなく勝手に持ってたんだけど
ステージに出てきた彼女は、小柄でカジュアルで
とても元気で愛嬌のあるご機嫌な女の子だった
まさにハピネス
終始にこにこしていたのが印象的だった

きゃりーぱみゅぱみゅ
冒頭MCにて
「今までいろんなフェスに参加させていただきましたが
今回ほど自分が場違いだと思ったことはありません」
実際には彼女を場違いだと思った人はあんまりいなかったと思う
PONPONPON、つけまつける、CANDY CANDY、きゃりーANAN
という鉄板チューン、PVに出てくるバックダンサーの少女達も登場し
曲が変わる都度振り付けを優しく誘導するなどきゃりーの盛り上げ方も絶妙で
結果としてサイドステージでは本日最高の盛り上がりを彼女は見せていた
個人的にはPerfumeのブレイク以降たびたびYMOと比較されてきた
中田ヤスタカの音楽をYMO主催のフェスで聞けるというのが画期的だった

Tokyo No.1 Soul Set
フェスは後半 日差しが徐々に弱まり快適な気温へと移行する中
彼らが再び暑苦しい空気を持ち寄りサイドステージへ
1曲目の「Rising Sun」冒頭のイントロで早くも気分が高揚
BIKKEの挙動不審な動きともごもごした聞き取れないライムは僕のイメージどおり、
それにしてもオリジナルラヴやビートニクスが時代に則して音楽を
日々更新し続けているのに対して
彼らの音楽にはあまり変化というものがぼくには感じられない
むしろ未だに90年代の幻影を追い続けているようにさえ思える
そこがいとおしいというべきか。
大好きなアルバム「Jr.」から「Hey Hey SPIDER」をやってくれて嬉しかった

木村カエラ
ソウル、ヒップホップ、テクノが中心のラインナップとなった本フェス中
木村カエラ率いるこのバンドが最も正当なロックンロールを聞かせてくれた気がする
堅実な楽曲と確かな腕を持った粒ぞろいのバックバンド陣、
なにより木村カエラの腰を据えたエモーショナルなヴォーカルと
魅力的な動き、殺人的なかわいさとスタイルの良さが圧巻だった
これはすげえーと思った

Curly Giraffe
カエラの直後ということもありステージ付近では移動し続ける大勢の客
それらを気にも留めずに気持ちの良さそうな顔で淡々と弾き語る高桑氏
アメリカ西海岸を思わせるグッドミュージックが夕焼けにマッチしていてよかった
ときおり顔を出すGreat 3っぽさには思わずにんまり。

岡村靖幸
感無量だった。
僕にとって岡村靖幸は、語り始めるとキリがないほど思い入れのあるシンガーなのだ
リアルタイマーじゃなくても、ネットに上げられたいくつかの動画を見るだけでも
その圧倒的なセンスには多くの人が心を奪われるだろう
3度目の逮捕を経た復活劇・・というのはいささか虫が良すぎるのではと
今でも思わなくもないのだけど
(たった一度の逮捕で干された人たちと彼との扱いの差はなんなんだ?)
やっぱり生で見れたのはすごく嬉しかった。
これまでのラインナップのあれこれを危うく忘れさせるほどの
パンチの利いたパフォーマンス。彼を知らない観客の誰もが
「このスーツぴちぴちの人すごい」と思ったことだろう
しかしどうだろう、復帰後の岡村ちゃんを見たファンはこぞって
全盛期にも匹敵とか超えたとか言っている
たしかにステージの盛り上げ方はうまいけど
年のせいか高音がいまいち伸びきらずに
裏声やシャウトで肝心なフレーズをごまかしている部分が散見されたのが
ぼくとしては少し残念だった ぼくは原曲をぜんぶ知ってるから
高音が出せていない箇所を聞いても脳内補完して楽しめたけど
果たして、このフェスで岡村ちゃんの曲を初めて聞いた人にも
「曲そのものの良さはちゃんと伝わっているのか」
という疑念がぬぐえずにいた

YMO
やっぱりYMOだよね、で帰ったのが3年前参加したときのワーハピだった
今年はYMO以外にも目当てのアーティストが目白押しだったので
そういうわけにはいかないだろうと高をくくっていたのだけど
終わってみれば今年もやっぱりYMOでした・・・

  1.Firecracker
  2.Rydeen
  3.Solid State Survivor
  4.Absolute Ego Dance
  5.灰色の段階
  6.中国女
  7.Cosmic Surfin’
  8.Nice Age
  9.東風
10.磁世紀 – 開け心
11.TECHNOPOLIS

YMOだけでもチケットの元が取れるんじゃないかというくらい
名曲だらけの充実したステージだった
大トリの19-20時という時間帯もあるだろう
涼しくて快適だし日中と比べて音の抜けがとても良い
わりと原曲に忠実なアレンジなのに
どうして彼らの音楽は今でもこんなにクールなんだろう
「Absolute Ego Dance」や「Nice Age」なんかの好きな曲もやってくれたし
アンコールでは予告どおり29年ぶりの演奏という「テクノポリス」も聞けて
「本当に来てよかった・・・」と心の底から思えたひと時だった

ちなみに、ワールドハピネスの翌日は一人で東京を散策してから帰った。
東京という街は人があまりにも多すぎるという意味において
やはり特殊なところで、どこで降りても切れ目のない人だかりに
あやうく自我を喪失するところだった

フェスを半パンで過ごしたせいで真っ赤に焼けた両足に
激しい火照りを感じつつ原宿の街を練り歩く。ipodYMOで前日のセトリメイン
ちょうど秋冬の立ち上げと重なる今のうちに服屋を回らなければと
原宿キャシディとディストリクトユナイテッドアローズに行って
それぞれで服を買った ここで今回の旅における節約計画はあっさり崩壊
ディストリクトで買った9分丈のグレースラックスは仕事で穿こうと買ったけど
9分丈なるものの存在を知らない上の世代から見たら
夏休み中に遅めの成長期が来てズボンが寸詰まりになった人
みたいに思われそうでいややなと思って私服で使うことにした
そのあと他にも服屋を転々と歩き回ったんだけど
前日のフェスの疲れがとれてないのもあって
途中でスタミナ切れして、神田の漫喫に入って
そこで夜まで時間をつぶして夜行バスですっと帰った。
疲れたけど、とても充実した二日間だった